研究紹介
脳がどのような計算をしているのかを明らかにする
私たちの身の回りでは、一瞬のうちに様々なできごとが起こります。脳は目や耳などの感覚器官から情報を取り込み、自分が置かれた状態を即座に認識し、何をすれば良いか判断し、実行に移します。私たちはこうした一連の情報処理を意識せず簡単に行いますが、ロボットに同じ課題を実行させようとするとなかなかうまくいきません。必要な計算の量が膨大であるため、あるいはそもそも何をどのように計算すれば課題を実行できるかも明らかになっていないためです。阪口・佐藤・饗庭研究室では、人間の脳をコンピュータのような「情報処理システム」として捉え、内部でどのような計算が行われているのかを考える「工学的アプローチ」からの脳機能の解明を目指しています。
阪口研究室
自分(人間)がどのような仕組みで動いているかをシステム工学の立場で理解する.
人間を一つのロボットと見立てれば,私の研究は「(人間という)ロボットがどのような仕組みで動いているか」を明らかにする研究です.ただし,人間の身体には,機械的なロボットと違って,①部品が多い,②速度が遅い(時間遅れが大きい),③特性が時間的に変化する,という性質があり,これらの問題を克服しながら身体を操るところに,ロボットとは違った,人間特有の感覚・運動制御の特色が隠されていると考えています.阪口研究室では,心理実験や行動計測、計算モデルの手段を組み合わせて,脳が身体を操る仕組みについて研究しています.また,これらの基礎的研究と並行して,楽器演奏やダンス,職人技といった現実の身体技能の仕組みを調べるほか,身体技能習得を支援する方法についても研究しています.
[Keyword] ヒトの感覚・運動機能の計算モデル / 運動学習 / 脳の情報表現 / 楽器演奏やダンスをはじめとする身体技能のメカニズム
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佐藤研究室
脳が世界を見る仕組みを数学的に記述する
私たちは自分で意識しなくてもすらすらと文章を読めたり、音声を聞き取ったりできます。これは人間が文字認識や音声認識を行っていることに相当しますが、こうした機能をコンピュータで実現しようとすると膨大な計算時間がかかります。ものごとを瞬時に認識するとき、感覚系はどのような計算を行っているのでしょうか。佐藤研究室では特に視覚の仕組みを明らかにするため、視覚情報処理に関係する神経細胞の振る舞いを数学的に記述し、コンピュータ上で活動のシミュレーションを行っています。
[Keyword] 視覚の数理 / 脳型コンピュータ / ニューロインフォマティクス
饗庭研究室
「できない」から「できる」状態になるための仕組みを探る
楽器演奏、スポーツ、料理、運転、キーボードのタイピングなど、私たちは熱心に練習に取り組むことでそれまでできなかったことができるようになります。私たちの脳はどのようにして新しい技能を獲得するのでしょうか。饗庭研究室では、技能獲得のメカニズムや、技能実現のためのシステムの研究、技能獲得のモチベーション維持に関する研究を行っています。特に楽器演奏技能について、聴覚抹消系の仕組みに着目した詳細な研究を行っています。教員はピアニストととしても活動しています。
[Keyword] 音楽 / 聴覚 / 実験心理学 / 聴性脳幹反応 / 聴覚抹消モデル