バイオリンのはなし

なぜバイオリンなのか?

そもそもなぜ楽器としてバイオリンを選んだのか,ということだが,これにはいろいろな背景がある.実際,バイオリンにするかビオラにするかについては習い始めるときまで決めておらず,先生と相談してとりあえずバイオリンから始めるということにしたぐらいである.

多人数で弾ける楽器であること

子どものときにピアノを習っていたことは先に書いたとおりだが,ピアノは基本的に一人で弾くもので,その意味で「孤独な」楽器である(実際,練習するときは楽器に向かって1時間,2時間と格闘することになる).もちろん,ピアノ五重奏曲や協奏曲,あるいは他の楽器の曲の伴奏などほかの人と合わせて弾く曲もあるが,素人にはそのような曲を弾く機会はまずない.

その一方で,私自身が曲を聴くときの好みは,どちらかといえば,ソロの演奏よりもオーケストラの演奏の方である.つまり,複数の楽器が織りなす音を聴く方が楽しい.このような音楽を奏でるには,オーケストラや室内楽の一員になることになるが,そうなると,ピアノは向いていない.別の楽器を始めなくてはということになる.

歌える楽器であること

オーケストラを構成する楽器の中で何が良いかとなると,木管楽器,弦楽器など「歌える」楽器がよい.ピアノの短所の一つは打楽器であるために,いったん出した音を連続的に大きくすることや途中で音色を変えることができないことである.もちろん,連打することやペダリングのテクニックで音を変えることはできるかもしれないが,そのような技巧なしに自然に音を変えるには,管楽器か弦楽器になる.

あとは好みで,木管楽器はクラリネットかオーボエ,弦楽器ならばバイオリンかビオラか,ということになる.バイオリン,クラリネットやオーボエはオーケストラの中できれいな旋律を聞かせてくれる.ビオラの渋いけれども低すぎない音域もまたよい.

話は少し脱線するが,「歌う」という意味では,何も楽器を使わなくても自分の声で歌うという選択肢もある.楽器を買う必要もなく,どこでも自分の身体だけあれば演奏できるし,自分の身体をそのまま使って「歌える」という意味で「歌唱」は理想的である.実際,大学生のころに合唱団に入っていたので,それを再開するということも考えられた.しかし,私はどうも「言葉」が苦手なのである(日常的にも,言葉のコミュニケーションは大の苦手だし...).歌唱では「詩」を口に出して歌うことになるが,テキストの意味を考えて演奏するというのがどうもあまり好きになれない(ハミングとかヴォーカリーズとかの方が好きである).やはり,音そのもの,つまり音色やハーモニックスを楽しみたいのである.となると,合唱は選択肢から外れる.

オーケストラに参加できる可能性が高いこと

さて,楽器を習うことをまじめに考えたときに,実際にアマチュアオーケストラにどうやって参加すればよいのかを調べるためにインターネットで検索してみた.アマチュアオーケストラの情報が集められたホームページがすぐに見つかったが,少なくとも東京近郊にはいくつもアマチュアオーケストラがあって,どこでも団員募集していることがわかった.

しかし,募集している楽器の種類を見てみると,弦楽器はどこも募集しているが木管楽器を募集しているところは少ない.つまり,クラリネットやオーボエが吹けるようになってもオーケストラに加わるのは難しいということである.これは個人的な想像だが,これには二つの理由があるのではないかと思う.一つは,オーケストラを構成するときに必要な楽器の本数が木管楽器は少なく,弦楽器は多いということである.たとえば,バイオリン奏者は第1,第2それぞれ10人いてもおかしくないが,オーボエが10本ということはまずない.もう一つは,木管楽器を吹ける人の数は弦楽器を弾ける人の数よりも多いのではないか(裏付けはなく,あくまで想像)ということである.管弦楽部はないけれども吹奏楽部はあるという中学・高校はかなりの数があるはずで,そこで木管楽器を習っていた人は意外に多いのではないだろうか.

ということで,これは弦楽器を選ぶしかないということになった.あとは,バイオリンかビオラかどちらかということだが,これには一長一短がある.ある音楽家にバイオリンとビオラとどちらがよいかという相談をしたところ,二つの答えが返ってきた.一つは,バイオリン奏者には自己主張が強いタイプの人が多く,ビオラには人の間にはいって調整するタイプの人が多いということ,もう一つはビオラ奏者の数はバイオリン奏者の数に比べて少ないので,私の年齢で楽器を始めてオーケストラに加わるならばビオラの方が壁が低いだろう(入団試験に通りやすいという意味)ということだった.第一の点については,私は明らかに調整型の人間なので,ビオラが向いているということになる.性格は別として,合唱団にいたときは,混声合唱の場合はテノール,男声合唱の場合はセカンドテノールとどちらの場合も内声パートを担当していて,その楽しさはよくわかっていたので,そういう意味でもビオラはとてもよさそうだということになった.

バイオリンに決める

ビオラを習いたいと思って先生を探すことになった.もともとヤマハなどの音楽教室に入る気はなく,個人レッスンを受けるつもりだったので,どうやって先生を探すのかは難しい問題だったが,最近はレッスンを受けたい個人と教えたい個人の間を取り持つ業者があり,そのような業者にも問い合わせてみたところ,バイオリン教師の中でビオラ教師を紹介できるということだった.さて,そういう仲介を依頼しようかと思っていたところであらためてインターネットで調べたところ,大学のすぐ近くに,個人レッスン主体の教室があることを発見した.さっそく主宰している先生に電子メールで連絡をとって相談したところ,バイオリンとビオラを両方教えられる先生を紹介するので,どちらの楽器についても相談してください.ということになった.最終的には,ビオラ奏者はバイオリン奏者から転向することがほとんどであることや,ビオラ曲よりもバイオリン曲の方が豊富であるということから,バイオインから始めましょう,ということになった.


Last-modified: 2019-10-22 (火) 11:13:15