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&size(32){''第13回 関東「音楽と脳勉強会」のご案内''};

*スケジュール [#j200172f]
''日時''  平成27年5月29日(金) 19:00~20:00
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''会場''  電気通信大学 西10号館2F 大会議室 (地図は[[こちら>http://www.uec.ac.jp/about/profile/access/]])~

*発表者 [#k1f61bfd]
橘 亮輔(東京大学)

*発表内容 [#o8b7a9b2]
音楽能力の生物学的基盤とはなにか。脳内に音楽を専門に担当する独立した領域があるとは考えにくい。音楽と脳の研究を推進するにあたっては、音楽能力をいくつか構成要素に分けて考え、またそれぞれの生態学的意味や系統発生を検討することが有用である。本発表では、Fitch(2015) における生物音楽学(bio-musicology)の議論を紹介しつつ、音楽能力の構成要素の生物基盤について検討する。特に、ヒト以外の動物において、能力の相同性・類似性を検討する比較研究の一端を紹介する。私自身がおこなっている鳴禽研究との関連についても議論したい。


参考文献:[[Fitch WT.  "Four principles of bio-musicology".Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2015 Mar 19;370(1664):20140091.>http://rstb.royalsocietypublishing.org/content/370/1664/20140091]]

*参加報告 [#n7c614e8]
今回の発表は前半では「音楽と脳の動物研究」と題し2015年3月のPhilos Trans R Soc Lond B Biol
Sci.特集号の内容についてのレビュー、後半はジュウシマツを用いた橘氏の現在の研究についての解説であった。
前半ではまずFitchによって提案された生物音楽学の4つの指針が示された。具体的にはa)多要素的視点では、音楽を複数の要素に分解して考えるという視点である。b)多元的説明ではディンバーゲンの四つのwhy+αという枠組みで生物の行動を説明する方法が説明された。動的視点or静的視点と、至近要因or究極要因という二元配置の枠組みの中で個体発生や系統発生、因果関係と適応とう現象を説明する方法である。また+αとして文化的要因についても議論が加えられた。c)相同性と類似性では比較アプローチとして霊長類に限らず昆虫を含む広い動物を含む議論の有用性が説かれた。また進化における相同(hoology)と相似(analogy)また、独立に獲得された形質であるが共通の遺伝子セットが用いらているDeep
homologyという興味深い現象についても言及された。d)広範囲の探索では、エリート主義の撤廃を主張し高尚なプロの音楽だけに囚われない広範な探索の重要性が説かれた。
Fitchは音楽性の生物学的に妥当な構成要素として4つの核を提案した。1)歌唱は複雑な発声学習によって獲得されるもととして定義することにより客観的な検討が可能になった。2)ドラミングは声を用いない構造化された音響信号を用いたコミュニケーションツールとして定義した。3)社会的同期では引き込みやbeat
perception and synchronization
(BPS)について様々な動物種で見られることが説明された。4)ダンスは常に音楽を伴い深く影響しあうものであるが音楽の認知科学では無視されがちであった。しかしダンスの定義は他の要素に比べて難しく他の構成要素との重複も多い。
Fitchによって提案された生物音楽学の枠組みは必ずしも明確な区分がなされているとは言い難い。しかしこれまで難しかった人間以外の動物における音楽性研究を進める上での重要な足がかりとなると考えられる。

後半の橘氏の研究発表ではヒトとトリの発声学習の統一モデルを作成するという試みが説明された。トリの神経核の機能的な繋がりがヒトの大脳皮質の層構造のモデルと類似していることが示され、結果として同様の学習機能を持つに至るという考えが提案された。また鳴禽類で明らかとなっている発声学習の経路がヒトの基底核ループに対応し強化学習や運動調整を担っているという考えが提案された。これらのアイデアから、発声学習という共通の機能の実現を担う聴覚運動回路のモデルが提案された。しかし、ヒトにおいては発声学習に対する基底核ループの寄与に関する知見は無く、一方トリにおいても聴覚情報を運動に繋げる回路が依然はっきりしていない。モデルの検証にはこれらの知見の収集が必須である。
(佐藤多加之)

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