第17回 関東「音楽と脳勉強会」のご案内

スケジュール

日時  平成27年9月25日(金) 19:00~20:00
会場  電気通信大学 西10号館2F 大会議室 (地図はこちら

発表者

橘 亮輔(東京大学)

発表内容

ジュウシマツの歌系列のリズム制御学習

発話や演奏では音系列の精密なタイミングの制御が要求されます。このような系列行動の時間的側面すなわちリズムの制御と学習を支える生物基盤はどのようなものでしょうか。私はジュウシマツの歌行動を対象として、音系列の時間制御を学習する能力を調べてきました。その結果、もともと持っている運動のばらつきがが学習に寄与することが示唆されつつありますので、これについてお話しいたします。

参考文献 Tachibana, R. O., Koumura, T., & Okanoya, K. (2015). Variability in the temporal parameters in the song of the Bengalese finch (Lonchura striata var. domestica). Journal of Comparative Physiology A, 201(12), 1157–1168.

参加報告

本発表では,前半に鳥の歌に関する研究の概要についてお話しいただき,後半にご自身の研究をお話しいただいた。前半ではまず,歌の研究が行われている鳥の種類が鳴禽類で盛んであることや,過去には楽譜で歌が記録されていたことなどの研究の歴史について語られた。次に,歌の学習に関するステージについて,①感覚学習(聴覚記憶を形成),②感覚運動学習(試行錯誤して学習),③subsong,④結晶化,⑤full songの5段階があることが説明された。さらに,歌の時間制御についてジュウシマツを対象にした研究に基づいて知見が述べられた。ジュウシマツは歌の音節が分離しやすいために研究に向いており,歌に関する発達は120日程度で完了するという。また,歌を制御する神経回路がある程度明らかになっており,HVC(hyperstriatum ventrale, pars caudalis), RA(robust nucleus of the arcopallium),脳幹のネットワークが重要であるそうだ。学習についてはLMAN(lateral magnocellular nucleus of the anterior nidopallium)が特に重要であり,LMANを失うと歌が覚えられなくなるという。  後半では,橘氏が実施している歌の時間制御に関する研究について述べられた。この研究では,鳥の歌を長時間録音して,音節とギャップ(ある音節と別の音節の間隔)に関する分析を行った。その結果,音節がギャップよりも持続時間が長いものの,持続時間のバラつきに関してはギャップで音節よりも大きいといった興味深い知見が報告されていた。この研究に関する詳細を知りたい方は,参考文献を是非読んで欲しい。その他,鳥の発達と歌に関する研究についての発表も行われ,興味深い結果が示されていた。  本発表では人を対象とした音楽・音響の研究をしている時にはあまり触れることのない鳥の歌に関する研究の概観に触れることが出来るとともに,橘氏の実施している根気強い行動観察実験の最新の知見に触れることができ,非常に有意義であった(森数馬)

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