jViolin

楽器と弓の持ち方(その6)

ずいぶんと更新が滞っていた.前回更新してから2年以上もたってしまっているが,ヴァイオリンの練習はその後も続けている.

この間に,ポジション移動ができるようになったりなど,テクニックもいろいろと向上し,それに伴う気づきもいろいろとあるが,やはり最大の問題は弓の持ち方である.いまだにこれでよし,という感じにはならない.

更新しなかったあいだに弓の持ち方や右腕の感じ方についてはいろいろな変遷があったが,今回は二つの点について書いてみたい.

手首の柔軟性

 手や手首の柔軟性については前回の更新時にも触れた.今回は,撓屈と尺屈の自由度について触れてみたい.

 何かものを握って運ぶとき,普通は手首の関節が積極的に動くことはなく,むしろ同じ姿勢を保つのではないであろうか.また,手首が動く場合でも,手首の動く方向は,腕全体の動きと同じ方向に屈曲するのが自然ではないだろうか.

 一方,ヴァイオリンの弓を上げるとき(アップボウ)は,左方向に前腕を動かすことになるが,このとき,手首はどちらかといえば,尺屈(小指側に屈曲)する姿勢をとる.一方,弓を下げるとき(ダウンボウ)では,手首は撓屈(親指側に屈曲)する姿勢をとる.つまり,手首は弓の進行方向と逆方向に屈曲するのである(注:これは筆者の現状での理解である.もっと技術が向上すると,この気づきは変わるかもしれない).

 これはつまり,手首の姿勢の制御が,弦との摩擦や重力に打ち勝って手の姿勢を維持するのではなく,むしろ,それらの力にませて受動的に使う方式で行われていることを示唆する.このような制御ルールが弓の制御にとってどのような意味をもつかは検討すべき事項であると思う.

弓の保持の仕方

 弓の持ち方の基本形は,親指と中指を中心として保持し,薬指がその手助けをして,人差し指と小指は弦にかかる重さの調節に用いる,というものである.このことは,ヴァイオリンを習い始めたときから,本の知識や先生の指導で知っていたことであるし,また,実際,そのようにして弓をもっていた.

 しかし,「親指と中指で保持する」といってもその保持の仕方にはいろいろなやり方がある.自分はこれまでこれら2本の指で上下方向に挟みこむようにして持つ感覚で持ってきた.つまり,親指と中指のPIP関節とDIP関節のあいだの部分で上下から挟みこむ感覚を中心に感じていたのである.しかし,どうも「上下方向」だけではなく「水平方向」に挟み込むようにして持つことも重要であることにようやく最近気づいた.ここでは薬指が重要な役割をする.つまり,薬指の腹を弓の「アイ」の部分に側面からあてて,水平方向に挟み込むのである.逆にいえば,これまでの弓の持ち方では,指の腹の部分が「遊んで」いたことになる.

 このように持ち方を変えることで,弓の動きの安定性が増して,以前よりもしっかりした音が出るようになった気がする.ほんのちょっとした感覚の違いで大きな違いが出てくるのがむつかしいところである.


Last-modified: 2019-10-22 (火) 11:13:15