バイオリンのはなし

技能習得を言葉で語る難しさ

入門編の本はたくさんあるが,中級編の本が少ないのはなぜか?

バイオリンを始めるときにいろいろな本を読んだが,どのような本を読んでも,基本的なこがらしか書かれていない,あるいは,少し難しい内容だと抽象的な説明でしか書かれていないような印象を受けた.最近ようやくこの理由がわかってきた.

今年に入って,この日記のの更新頻度が極端に落ちている.これは,もちろん自分が怠惰であることが最大の理由であるが,もう一つの理由は,自分の感覚で感じていることを言葉で表現するのがどんどん難しくなってきていることである.

日々30分-1時間という短時間とはいえ,さすがに1年間毎日練習すれば,私のような高齢者でも楽器を弾くのは間違いなく上達する.以前はできなかったことができるようになり,音色も以前に比べればきれいになり,安定してきている.しかし,なぜそのようにうまく弾けるようになったのかを言葉として説明することは難しい.

あえて一つかけば,身体のいろいろな部分から余計なが抜けてきたことがあげられるかもしれない.弓の持ち方弓の持ち方(その2)の項目で書いたように,習い始めのころは手首にがっちり力が入っていて,手で弓を動かす感覚が強かった.それに対し,最近は手首で弓を動かそうという感覚がだんだん薄れてきて,手首のバネを自然に使うという感じが強くなってきた.もちろん,新しい曲を弾くときなどは,身体中に力が入って手首で弓をひねくり回すくせがもどってきてしまうのだが,そういうときは以前練習した曲をゆったり弾こうとすれば,力を抜くことができるようである.

まさに,運動研究でいわれる「運動の習熟に応じて筋の同時活性度が下がっていく」という現象の典型例である.ただ,運動に習熟するから同時活性度が下がるのか,同時活性度が下がるから運動に習熟していくのかはよくわからない.もちろん「ニワトリと卵」の関係にある可能性が高い.


Last-modified: 2019-10-22 (火) 11:13:15